既に大きく報道されているとおり、ヨーロッパ憲法の批准へのフランスの答えは「NON」という結果であった。
NONの勝利は予想はされていたものの、心のどこかではなんとなくOUIが勝つ淡い期待を抱いていただけに少しショックであった。が、所詮私は投票権のない一外国人、フランス人の決断には黙って着いていくしかない身である。
調査機関TNS-SOFRESによるNONへの投票理由の第一位は「失業が増えると困るから」、第二位は「フランスの現状に不満なため」、第三位は「NONにより、ヨーロッパ憲法の見直しが実現されるから」、第四位は「ヨーロッパ憲法は自由主義の色が濃い上、難解だから」などがあげられている。ナショナリズム的理由(フランスのアイデンティティが失われる、トルコの加入への恐れ)がそのあとに続く。
理由を見てもNONへの投票はヨーロッパ憲法の内容に対する反対ではなく、現在のフランスの政治、生活への不安からの行動であるのは明らかである。
こんな時に思うのは民主主義の難しさだ。民主主義は昔、一部のエリート層によってのみ国政が行われていたことへの解決法として現在では最良の政治形態と考えられている。それはそれでよい。しかし、民主主義イコール多数決主義となってくると必ずしも最良の選択が行われるとは言い難い。
学校でも会社でも何のグループでもいえることであるが、大勢のグループで何か決めなければならない場合、多数の意向を考慮した方がよいケースと少数の意向であっても長期的には多数にとって有利な選択というケース(つまり一部の人間に先見の明がある場合)が生まれる。が、一事が万事を多数決にかけていれば後者の選択は絶対にできない。
批判を受けることを覚悟で非常に単純化した例を挙げると、例えば子供が3人いる5人家族の家庭で5人に平等な投票権があったとする。民主的な家庭なのですべて多数決によって方針を決定するのだとした場合どうなるか。週末の食事はすべてマクドナルド、甘いお菓子やコーラも食べ放題飲み放題。テレビも子供の好きな番組ばかり見ることになる。ブランドのスポーツウェアや靴もどんどん買う。バカンスだってどんどん出かける。学校の宿題なんてもちろん後回しだ。そして家賃や医療費が払えなくなると多数派である子供(3票)は親(2票)に対して「お金がないのは親の金銭管理が悪いからである。どうにかせよ。」と詰め寄る。こんな状態だから子供に就職口があるはずもなく、いつまでも親の家に居続ける。同級生の隣の家の子供は就職して収入を得ている。それを横目で見て「仕事がないのは親の責任だ。仕事を与えろ。」と騒ぐ・・・。
なんだかどこかで聞いた事のある話である。
コメント(18)| Track back(0) | 2005年05月30日
|