フランスって

建物の切り売り問題

フランスではここ数年住宅物件の値上がりが激しく、家賃もそれに合わせてどんどん上がっている。

そんな中で今問題になっているのが建物の切り売り(vente à la découpe)である。建物の切り売りについてはこのサイトに説明がある。

1970年から80年にかけて保険会社などが投資目的で多くの建物を建築、購入した。これらの建物を住人がいるままでまるごと不動産投資会社が安価で購入、その後ひとつひとつのアパートを高値で売却してゆく、というシステムである。

自分が現在住んでいる建物がこのシステムで購入されてしまった場合、こういうことが起こる。ある日書留郵便が届いたので開けてみたところ、「あなたが現在お住まいのアパートは新しい家主に売却されました。新家主は同アパートをxxxxxxユーロで売却する予定です。あなたがこの値段で同アパートをご購入の意思の有無を2ヶ月以内にお知らせ下さい。お知らせがなかった場合はご購入の意思がないものと解釈しますので現在の賃貸契約終了時にアパートを退去いただくことになります」。

フランスでは住人がいるアパートを売却する場合、現住人にまず売却を提案する義務(droit de préemption)がある。その住人が売却を希望しなかった場合に初めて第三者に売却できるのだが、現住人に提示した値段以下で売ってはいけないと法律で決められている。

上記の書留郵便の提案はまさにその法律に則ったものである。しかし問題は売却提示金額だ。ここ数年の住宅物件高騰のせいで現在はパリのいわゆる「大衆的な」地区ですら普通の人には手の届かないような市場価格になってしまっている。もともと家賃の安かった大衆的な地区の賃貸住人に払える金額ではない。

買えないとなれば住人は泣く泣くアパートを退去するしかないのが現状だ。そしてその後投資会社はそのアパートを高級に改装し、べらぼうな金額で売る、というシナリオだ。

いまやパリ市内に住むというのは一般市民には夢のまた夢だ。数年前までは「ちょっと怪しげな」地区だったところにまで高級マンションが出現し、お金のある人達が住むようになってきている。それによって庶民がどんどん追い出され、追い出された庶民は比較的安価な郊外へと押し出されている。

この現象をストップするために議会でも議論されているが先日第一の案(社会党案)が不採用となったため、また6月まで結論が先延ばしとなった(参考記事)。

パリを一部のお金持ちだけの住む町にしないためにも有効な方策が待たれる。

コメント(16)| Track back(0) | 2005年05月18日

■ 謎なんですよね?
パリの不動産が高騰しているという話は他からも聞きましたが、いったい誰が買って、誰に貸してるんでしょうか?高い値段で買う以上、それに見合った賃料で借りる人がいなければ採算が取れません。
パリという都市が高い家賃で借りられる人、すなわちそれが可能な高額所得者を生み出すだけの生産性の高い都市であるにならば、その高額所得者は消費支出もそれなりに多いはずなので、低賃金の労働者にも恩恵が及ぶはずなのです。
もしかすると、パリの不動産価格がパリという都市の持つ生産性以下に抑えられてきて、今回それが是正されているというのであれば、低賃金の労働者は郊外のより安いところに転居せざるを得ないですが、自由主義経済である以上それはやむを得ません。古今東西で、低所得者にために物価を安くする社会主義的政策が取られてきましたが、結局経済の歪みを拡大するだけで成功したためしがありません。
かつての日本のようなバブルであれば話は別ですが、現在のユーロ圏にそれほどの資金がだぶついているようにも思えません。低所得者に恩恵が及ばず、ただ、不動産価格が高騰するのであればフランス経済のシステムのどこかが歪んでるはずなんですけど、そのへんは日本のメディアにも記事らしいものは見当たりません。というわけで謎ですね。
きまるり (2005-05-18 23:18:53)

■ 経済システムのことはよくわかりませんが
きまるりさんこんにちは。
パリの高級不動産は昔から外国人による購入が多いようです。パリは高いとは言ってもロンドンに比べれば安く、都市としての魅力もあるため外国の金持ちでパリに住む、または別宅を持つ人が多いのでしょう。だからパリという都市が高額所得者を生み出しているのではない気がします。
また、安かった時期に購入した物件も全部まとめて上がっていますので買い替えの人は今でも購入が可能です。
パリの不動産価格の展望についてははっきりした論調傾向はなくいろいろな見方がとびかっていますが、傾向としてはバブル的な要素は低く、高レベルで安定する、または多少下がるが暴落はなしという意見が多いです。でもそのような情報も単に暴落を起こさないための情報操作である可能性もゼロではないですね。
ふらんす(筆者) (2005-05-19 16:45:54)

■ NO TITLE
ふらんすさん、こんにちは。

この状況、ベルギーでも同じです。我が家はまさにこの切り売りにより以前のアパートを出る形になりました。狭かったのでいずれ移るつもりではいたのですが、私が前の会社を辞めることになった矢先だったので、タイミングは最悪でした。
次の仕事が決まっていたものの3ヶ月の空白(収入が途切れる)期間があり、そこへ引越し代や現在のアパートの敷金などで随分出費がかさんでしまいました。とほほ・・・。
先日も、今のアパートの管理人が物件の状態を見たいと訪ねて来たときは「また売りに出されちゃうの?!」とヒヤヒヤ。結局単なる定期的なチェックだったのですが。

ブリュッセルの物件もここ数年の急高騰で購入が難しくなる一方ですから、やはり庶民がどんどん押しやられている感じです。
まだまだパリに比べれば安いのですが、EU本部や関連機関に勤める裕福な人が増える一方なので、今のところ歯止めとなるものはありません。

一方で市が用意している低所得者用の住宅は、収入がほぼゼロのような人や闇労働者で埋まってしまい、貧富の差が開くばかり。のどかな都市ブリュッセルが、大都市のよくある問題点をそのまま受け継いで変わっていこうとしているのは、大変残念です。
ydr (2005-05-20 03:23:40)

■ この問題…
当のフランス人たちの反応はどんなものですか?外からみていると良くわかりませんが、下記の「連帯の日」なんかよりも騒がなければならない問題ような気もしますが…
punipunipyonpyon (2005-05-20 10:00:37)

■ フランス人の反応など
ydrさんこんにちは。
ブリュッセルも同じ状況なんですか。知りませんでした。パリの場合は公営の低所得者用住宅までも一部の「偽失業者」「偽低所得者」に与えられているケースがあり、本当の低所得者は郊外の公営住宅に流れる傾向さえあります。まあこれはまた問題のありかが別ですけど。

ぷにぴょんさんこんにちは。
いやー、それがそれほどは騒がれていません。まあ、連帯の日にと比べると「被害者」の数が圧倒的に違うからかと思われます。当事者達はグループを作って政府に陳情しています。パリだけでなくリヨンやマルセイユなど他の大都市でも同様の状況が生まれています。
ふらんす(筆者) (2005-05-20 17:40:33)

■ 実需があるのであれば如何ともしがたいですが
現実に最終需要(高い不動産を買って自分で使う人+高い家賃を払って暮らす人)がいるのであれば、市場原理に従って不動産の価格や家賃は上がります。
こればかりはどうしようもありません。不動産の持ち主に高く売るなとか貸すなとは誰もいえませんから。
追い出される人が遠方の安いところに行かざるを得ないとしてもそれまで市場価格より安いところに住めたのがラッキーと思うしかないでしょう。もし何らかの対策をというのであれば、契約期限とはいえ退去を要求するのであれば1〜数か月分の家賃を貸主に支払わせるような法律でもつくるということぐらいしか思いつきません。
フランス全土でこのような傾向があるとすれば、フランスの景気はいいはずだし、失業率だって下がるはずなんですが・・・・。
きまるり (2005-05-20 22:17:00)

■ 法律
きまるりさんこんにちは。
どのような内容になるのかは知らないのですがやはり切り売りに歯止めをかけるような法律が検討されているようです。他の国ではいざ知らず、少なくとも現在のフランスでは市場原理を野放しにすることは(良くも悪しくも)まず考えられませんから・・・。
ふらんす(筆者) (2005-05-23 17:53:23)

■ >きまるりさん
>パリという都市が高い家賃で借りられる人、すなわちそれが可能な高額所得者を生み出すだけの生産性の高い都市であるにならば、
ニューヨ−ク、ロンドン、東京等とは比較にならないとは言え、パリは、中央集中が顕著で政治的・経済的「中大国」フランスの首都ですから、当然一定程度の生産性はあり高額所得者は存在します。
ただフランスさんが指摘されるように、外国人が不動産価格高騰に寄与しているのは事実で、不動産価格を高騰させる生産性はパリそのものでは無く外国に由来すると考えることも可能です。しかし外国人を惹き付けるパリのソフト・パワーつまり文化的付加価値をもパリの生産性に数えることも可能です。
何れにせよパリは、中程度の富を産み出す生産性は有している事になります。

>低所得者に恩恵が及ばず、ただ、不動産価格が高騰するのであればフランス経済のシステムのどこかが歪んでるはずなんですけど
>フランス全土でこのような傾向があるとすれば、フランスの景気はいいはずだし、失業率だって下がるはずなんですが・・・・。
生産された富の配分が、公平になされないという事情は、日本を含むあらゆる資本主義国に偏在する現象で、珍しい事でも不思議な事でもないでしょう。日本も失業率5%の長期不況時にも、外国人訪問者は「どこが不況なんだ」と驚くほどブランド店は人で溢れていた訳で、「カネはある所にはある」という事です。
ただフランスの場合配分の歪みが顕著なのは事実で、富の15%は所得上位者5%により占有されていると言われ、日本は勿論、隣国ドイツと較べても社会層間の収入格差は大きいとされます。
その理由を挙げていくとキリがありませんが、1)「連帯財産税」導入後でも、財産への課税は薄く財産家に有利。2)付加価値度が高く国際競争力のある仏産業は航空、上下水道位で、他分野では賃金を上げれば競争力が低下する。3)高級官僚と民間への天下った彼等という「国家エリート」が、公共部門の重みが依然大という仏経済の構造の下、産業と富を牛耳る既得権層を形成しており、庶民もそれを容認し社会階層上昇意欲も薄いというメンタリティーがある。4)仏の租税圧力は極めて高く、社会政策にも多大な予算を費やしている一方、非効率・不透明な公共セクターに投入される資金は必ずしも低所得層を潤すとは限らない。等々の事情があり、仏論者もリベラル派は「仏資本主義はarchaique」との批判を盛んに口にします。

>古今東西で、低所得者にために物価を安くする社会主義的政策が取られてきましたが、結局経済の歪みを拡大するだけで成功したためしがありません。
社会主義経済よりも資本主義経済の方が効率が高いのは歴史が証明した形ですが、資本主義の枠内で「市場の失敗」が起こり得ることを認め「市場の制御」を試みる、広い意味での「社会民主主義」的方向は、現代の趨勢ですし、様々な失敗例にも拘わらず、その可能性が完全に否定された訳でもないでしょう。米のように低所得者が、社会保障やクレジット・カード所有から阻害されてしまう社会が、より成功した社会なのかは、様々な意見があり得るでしょう。

>低賃金の労働者は郊外のより安いところに転居せざるを得ないですが、自由主義経済である以上それはやむを得ません。
>実需があるのであれば如何ともしがたい
都市政策は、経済原理だけで決められるものではありません。世界中どこの大都市でも、都市内部、諸郊外地区間で、高級住宅区域とスラム的地域が、分化かつ並立し、何かのきっかけで両者の間に衝突が生じる事態が発生しており、治安上からも問題となっています。東京のように都心が夜無人化する都市は、居住環境上からも、治安上からも危うさを含んでいるとも言えると思います。
Verdi prati (2005-05-24 09:44:49)

■ 苦手分野
Verdi pratiさんこんにちは。
経済や政治の具体的な例を出して説明するのは私の苦手分野なので、Verdiさんのような方が登場していただけると本当に助かります。
最近のフランスはアメリカ式資本主義アレルギーが強すぎ、金持ちを上手に利用するのに失敗、結果的に金持ちは外国に逃げて貧乏人だけが残るような傾向があるように思います。そしてフランスで課税対象にならない外国人の金持ちばかりがフランスに大挙してくる・・・。困るなー。
ふらんす(筆者) (2005-05-24 16:55:45)

■ 地価高騰
はじめまして。
ここ数年の地価高騰には本当に驚かされますね。本当に価値と見合っている金額なのか、大きな疑問が沸いてきます。
ウチはモンマルトルなんですが、最近ではストゥディオでも20万ユーロなんて値がザラに付いてます。もちろん家賃もそれに従って高騰しており、昔の下町的雰囲気は消えていってます。

最近では「外国人へアパートを週単位で貸す」のが良い商売になってるみたいで、普通に月貸しする時の一ヶ月の家賃を一週間分の料金として貸してる感じです。お客は主にアメリカ人か、欧州の人。ウチの隣でも頻繁にお客の出入りがあります。

ビンボー人が追い出されそうな状態のアパートも近所にあり、そこを通るたびに「もうすぐあの人たち退去させられるんだろうか?」と気になります。その向かいのアパートはすでに改装が終わりかけています。長年住み慣れた地元の人たちが追い出されるのを見るのは忍びないです。
yaco (2005-05-26 01:58:50)

■ 古き良きパリの下町
yacoさんはじめまして。
モンマルトルですか。いいですね。あのへんは昔は本当に貧乏画家やその他芸術家、普通の人達の住む場所だったのに今では芸能人を始めとするお金持ちがかなり住んでいますよね。私が住んだことのあるベルビル界隈はまだまだ雑然としていていろいろな国の人達、そして芸術家が混ざって住んでいましたがそこすらも今は高級アパートへの改装がじわじわと進んでいる気がします。パルマンチエ通りなどでもさびれたカフェがいつの間におしゃれなカフェになっていたりして、いいのか悪いのか・・・。ちょっとさびしいですね。
ふらんす(筆者) (2005-05-26 16:44:53)

■ 古き良き時代は・・・
20世紀初頭のピガール界隈の建物はとても愉快な外装で、映画「ムーラン・ルージュ」を彷彿とさせる感じだったのです。(雑誌の白黒写真で見ました。)そういうのを積極的に再現したり、今かろうじて残っている古く美しい外観の建物を保護することを先行させたほうがいいと思うのですが。。。味気ない外観の新しいアパートに変わっていくのは残念です。そして同時に地元の普通の人たちが追い出されていくのですから。

時々、丘の上を散歩するのですが、ダリダの家やらル・ルーシュ監督の家など、あのあたりは本当に高級住宅街。でも重厚な外観でしっとり落ち着いた雰囲気があり、味があって良いものです。そこから少し下った所は、上記のとおりなんですが・・・。
yaco (2005-05-26 17:59:15)

■ ピガール界隈
yacoさんこんにちは。
ピガール界隈って不思議なところですよね。あんなに猥雑なのに一本入ると私道があり、庭付きの家が。高いんでしょうね、それこそ。
ふらんす(筆者) (2005-05-27 17:53:36)

■ 路地裏のオアシス
パリのアパートって、京都みたいに「うなぎのねどこ」状態が多いですよね。通りの顔と、奥に入った時の姿がぜんぜん違ったり。
ウチは地上階で、小さいですがプライベートな中庭があり、直接路地から鉄扉を開けて中に入ることができるので、パリにはめずらしく田舎の雰囲気があります。ピガールとアベスの間くらいに位置してます。この辺りはそういう雰囲気の場所けっこうあります。
去年買ったんですが、この一年でさらに値段が上がっており、今年だったら高すぎて買えなかったかも、と夫が言ってました。
yaco (2005-05-27 20:04:56)

■ Verdi pratiさん、こんにちは
丸の内や霞ヶ関はともかく東京都心部が夜間無人地帯になるのも困りものではありますが、かといって山手線内側に低所得者用の住居を用意するというのは、税金から多額の補助が必要ですし、入居者が特権階級になってしまいます。
最近はかしましくないですが、一時都内の都営住宅に入居条件を遥かに上回る所得のある世帯が住んで居ることが明らかになり問題になりました。立地のよいところにある都営住宅はそこに住めるというだけで特権です。コネや賄賂が付きまといます。
アメリカ型の資本主義は好きではないですが、かといって、それに代わる制度で遜色ない効率性を発揮できる社会システム(アメリカ資本主義の修正版ではあろうと思いますが)は見つかっていないように思います。高度成長時代の日本はパイを大きくしつつ、かつ、切り方を平等に近づけるという社会でしたが、歴史のあだばなだのようで残念です。
日本もフランスのような階層社会になりつつあるのではという気がしてなりません。
きまるり (2005-05-28 10:20:29)

■ いろいろ
yacoさんこんにちは。
私の住んでいた19区にも庭付きの家の並ぶ地区があり、もともとは労働者の家だったらしいのですが最近ではすっかりブルジョワ化して下々の者には買えない値段になってます。パリで庭付きなんてうらやましいです。

きまるりさんこんにちは。
日本には階層がない、というのはもはや幻想なのでしょうか。フランスではご存知のとおりNONが勝ち、これまた別の意味での階層差があらわになりました。難しいですね。
ふらんす(筆者) (2005-05-30 18:15:41)

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